ファーストミッションだとティエリアは言った。
「生きていたのか」
「残念だが別人だ」
ティエリアは端末を操作した。写真に写る男は、眼帯はないものの記憶の中のロックオンと同一人物に見えた。
「ライル・ディランディ、アイルランド在住、反政府勢力カタロンの一員で……彼らは一卵性双生児だ」
「双子なのか。ティエリア、彼をガンダムに乗せるつもりか?」
「そうだ。パイロット適性は十分にクリアしている」
「どうして俺が」
どの面下げてロックオンの家族に会えというのだ。もし援護に間に合えばロックオンは生きていたかもしれないのに。
モニター越しの光景はいまだに鮮明に覚えている。
「君が最も暇だからだ」
「……暇」
記憶はどこかに吹き飛んで、刹那はティエリアの顔をまじまじと見る。
あけすけな物言いは相変わらずだった。しかし何かひっかかる。
「刹那・F・セイエイ、エクシアの太陽炉をダブルオーガンダムに換装するまでここで君がやれることはない」
「機体を乗り換えるなら相応の訓練が必要だ。換装作業自体も一日もかからないと聞いている」
「しかしアロウズに嗅ぎつかれるより先に人員をそろえる必要がある」
妙に論理的でないのだ、ティエリアなのに。刹那はしばらく迷った後、言った。
「ティエリアが行けばいい」
面白いほどティエリアは動揺した。そっけなさを取り繕うとしているがうまくいってはいない。
「これは命令だ」
ロックオンはヴァーチェを守って傷を負った。つまりライル・ディランディと会うことはティエリアにとっても
「気詰まりなのか」
おもわず呟いていた。ティエリアの目つきに一段と険がこもる。
「……何か言ったか?」
「いや」
考えてることが口から出るのは四年も単独行動していた弊害だった。
「……すでにルートは手配済みだ」
「了解した、俺が行く」
途端にティエリアの纏う雰囲気が穏やかなものになった。ほとんど変わっていないティエリアだが少しだけ人間らしくなったと思った。
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