一人用のトレイに無理矢理二人分の朝食をのせていく。毎日特に変わり栄えのないメニューだが、無料なのがありがたかった。食堂はロックオンのように、遅めに起きた人たちでそれなりに混んでいた。
「朝からよく食べるわね」 シリアルのボウルに牛乳を注いでいると、青い顔でスメラギが話しかけてきた。随分酒臭いこの女性は若いながらもソレスタルビーイング作戦部の中核を担う人物の一人だ。 「二人分だ、大体朝から酒臭いよりかはマシだろが」 「祝杯ぐらいあげたっていいじゃない、昨日はちょっと飲みすぎたけど」 「ちょっとじゃねーだろ」 この女性が酒豪であることは周知の事実だ。二日酔いだということはありえないくらい飲んだのだと容易に想像がついた。トレイの上にはフルーツとサラダがほんの少しのっているだけだ。対してロックオンのトレイにはシリアル、トースト、サラダとフルーツ、ハムやチーズやオムレツなどが所狭しと並んでいた。 「それで、例の子とは上手くやってるの?」 ロックオンは嫌そうな顔をした。 「知ってるのかよ」 「知らないわけないじゃない、昨日の作戦誰が指揮してたと思ってるの」 「スメラギ様でございます」 「よろしい」 大仰なやり取りにロックオンは苦笑した。スメラギも笑顔をこぼした。二人はトレイを持って料理が並んだ台を離れた。端っこのテーブルにとりあえずトレイを置くと、スメラギは真面目な顔に変わった。 「で、どうなのよ」 「メシは食った。夜も多分寝てた。上手くやってるかはわかんねー」 「なにそれ。そうだ、今日中に医務室に行って健康診断を受けさせておけって」 「上から? メンドイな」 「変な病気流行ったら困るでしょ、そしたら一番先に被害にあうのはロックオンかもね」 今朝のことを思い出して、ロックオンは背筋に冷たいものを感じた。他のメンバーと同じくロックオンも代表的な感染症に対しての予防接種は済ませてあるが、全てを網羅してるわけなどないのだ。 「……わかったよ。けど余計にかかる分の生活費と代わりの休暇なんとかしといてくれよな」 「確かにね、あとなにか必要なこととかあったら聞いておくけど」 ロックオンは即答した。 「とりあえず服と靴」 「あとで届けるわ。じゃあロックオン頼んだわ」 「へいへい」 スメラギは危なっかしい足取りで並んだテーブルに向かった。どうやら友人を見つけたようだ。ロックオンはかなり重くなったトレイをもって、人の波を上手くかわしながら食堂の出入り口に向かった。 PR 2007/10/20(Sat) 16:56:59
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